日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第360夜 妻に会いに行く

ついさっき、25日水曜の夜10時ごろに観た短い夢です。

「たまには妻に会いに行こう」
そう思い立って、すぐに出掛けることにした。

俺は今、妻とは別々に暮らしている。
今の俺は、どこか海岸に立つログハウスで、独りで暮らしているのだ。
毎日、穏やかな波を眺めて、ぼーっとしている。

「前に妻に会ったのはいつだっけな」
もう半年か1年前だろう。
はっきりと思い出せないのは、その間、まったく連絡がなかったからだ。
今はあまり深くものを考えないくらしだし。

この家から駅まで歩き、電車に乗った。
電車は最初のうちは海岸線に沿って走っていたが、じきに陸地の中に入り、郊外の街に近づいた。
そこで、急に暗い所に入る。
「おお。トンネルがあったのか」

トンネルの中は真っ暗だった。
がたん、がたんと、レールの音がする。
このトンネルが長くて、果てしなく続く感じがする。
「おいおい。こんな長いトンネルなんてどこにあったっけ?」
20分くらい経過しても、なかなか外に出ない。
もしかして、地下鉄なのかも。

しばらくすると、ようやく駅に着いた。
かなり地中深くにある駅だ。
「ここはどこだろ」
都心の深い所にある地下鉄の駅に似ている。

階段を登り、駅の外に出る。
持病が心臓なので、どうかと思ったが、案外簡単に登れた。
「妻の家はどこなんだっけか」
妻は前に俺たちが住んでいた家ではなく、今は別の家に住んでいる。

自然が豊かで、景色のきれいな場所だった。
「ああ。妻は空気の良い所が好きだったよな」
住所は分からないが、方向が間違ってはいない。

高原の上みたいな別荘地に着く。
「あの家だ」
山荘みたいだが、つくり自体は大きな家だ。
2階に広いベランダがある。

家の前に立つと、上のベランダから声が聞こえる。
妻と誰か男が話す声だ。
「もうそろそろ良いんじゃないか?」
これは男の声。
「でも・・・。まだ心の整理がついていない」
こっちは妻だ。
「そうは言っても、もう一緒に暮らしているようなもんだよ。きちんと結婚しよう」
「・・・」
結婚の相談だった。
男は妻に「結婚してくれ」と言っていた。

「でも、お父さんが・・・」
妻は渋っているようだ。どうやら俺のことを気にしているらしい。
ベランダの手すりにに妻が見える。
その妻の肩を男が抱き寄せる。
「もう旦那さんが死んでから2年以上経つ。そろそろ新しい人生のことを考えるべきじゃないか」

そうだよ。
もう前の旦那は死んでいるのだから、新しい男と付き合っても、結婚しても問題は無い。
ここで記憶が甦る。
「ああ。俺って、死んでたんだ」
そうだった。
俺は散歩に出かけたのだが、畑の間の小道を歩いている時に倒れたのだった。
そのままそこで心停止し、数分で亡くなったというわけだ。

俺はここですっかり胸を撫で下ろした。
「これなら大丈夫だ。きちんと妻のことを守ってくれる男がいる」
心配することはないよな。

すぐ近くの山の上には、桜が咲いていた。
もう散り始めている。
そこで俺はその桜の枝に、「ふう」と息を吹き掛けた。
桜の花びらが風に舞いあがって、空中を飛び、ひらひらと落ちた。
花弁が落ちたのは、妻の肩の上だ。

「チチ」
庭の方から小さい舌打ちが聞こえる。
視線を下に下ろすと、その家の庭に5歳くらいの幼女が立って俺を見ていた。
小さく首を振っている。
「関わったらだめだ」と言っているのだ。

そうだよな。俺はもう幽霊だし、生きている人間と関わるのは不味い。
「分かった」と言うように、女の子に手を上げる。
この子も幽霊で、この家の周りで遊んでいるのだな。

ま、俺ももう帰ろう。
再びトンネルを通って、今の俺が居るべき場所に戻るのだ。
もちろん、それは「あの世」のことだ。

俺は妻の住む家に背中を向け、もう一度歩き出す。
また、あの長いトンネルを通るのだ。

ここで覚醒。

夢の中では、私はもう死んでいました。
既にトンネルの向こう側に居ますが、心残りがあったので、海を渡らず、手前でじっとしていたようです。
海は三途の川で、これを渡ると、もう現世に関わることは出来ないのです。
しかし、妻の様子を見て安心したので、今度は向こう岸に行こうと考えていました。